名古屋駅近くの
味噌串カツ酒

名古屋駅すぐの聖地!「八幡屋」で味わう真っ黒な味噌串カツと至高のどて焼き実食レポ名古屋駅の高層ビル群を見上げ、目まぐるしく変わる街並みを少し西へと歩を進めると、そこには嘘のように時間が止まった一角があります。
今回ご紹介するのは、名古屋駅エリアの飲兵衛たちが「最後の砦」として愛してやまない大衆酒場の最高峰、「八幡屋(やわたや)」です。正直に言いましょう。初めてこの店の前に立った時、私は少しだけ足がすくみました。剥き出しの電球、年季の入った木のカウンター、そして何より、歩道にまで溢れ出さんばかりの「昭和」の熱気。でも、その暖簾をくぐった瞬間、あなたは気づくはずです。こここそが、都会の砂漠で見つけた本物のオアシスなのだと。
漆黒の「味噌の海」が誘う、禁断の儀式お店の主役は、カウンターのど真ん中でグツグツと煮え滾る(にえたぎる)、真っ黒な「味噌の海」です。この大きな鍋こそが八幡屋の心臓部。中にはどて焼き(牛スジ)や串カツ、そして各種おでんが、秘伝の八丁味噌だれにどっぷりと浸かり、その旨味を吸い込み続けています。
ここに来たら、まずは「串カツ」を注文してください。注文が入ってから目の前で揚げられる、黄金色の串カツ。それがお皿に置かれたら、ここからが八幡屋流、最高にワクワクする「儀式」の始まりです。熱々のカツを手に取り、カウンター越しの大鍋の中に「ドボン」と豪快に潜らせる。正直、この瞬間の背徳感と高揚感といったらありません。漆黒の味噌をたっぷりと纏った串カツを一口かじれば、外はサクッ、中はジュワッ。八丁味噌特有の深いコクと渋み、そして豚肉の脂の甘みが口の中で完璧に融合します。見た目は驚くほど真っ黒で、さぞかし味が濃いのだろうと身構えますが、実は意外なほど後味はまろやか。継ぎ足し続けられたタレには、肉や野菜の旨味が幾重にも重なっており、何本でもいけてしまう魔力を持っています。
ここで一つ、大切なルールを。当然ながら「二度漬け」は厳禁です。最初の一回で、どれだけ丁寧に、かつ大胆に味噌を纏わせるか。その真剣勝負こそが、八幡屋での楽しみ方なんです。「飲む」というより「浸る」、至高のどて焼きそして、その味噌だれの海から救い出されるもう一つの主役が「どて焼き(スジ)」です。口に運べば、もはや噛む必要がないほどトロトロに煮込まれたスジ肉が、舌の上でほどけていきます。脂の甘みが味噌の力強さと溶け合い、鼻を抜ける香ばしい匂い……。そこに、キンキンに冷えたビールを流し込む。あぁ、日本人に生まれてよかった。そんな、ありふれているけれど本物の独り言が、こぼれてしまいそうになります。
さらに、おでんの「大根」も忘れてはいけません。中まで完全に飴色に染まったその一切れに箸を入れれば、閉じ込められていたお出汁と味噌のハーモニーが溢れ出します。冬の寒い日はもちろん、夏の暑い日に汗をかきながら、この熱々のおでんを頬張るのも、また一興。お隣では、仕事帰りのサラリーマンが一人、静かにワンカップの酒を傾けています。また向こうでは、若いカップルが「何これ、すごい黒い!」と目を丸くして笑い合っている。
ここでは、社会的地位も年齢も関係ありません。誰もがこの「味噌の海」の前では平等に、ただ一人の「呑助」へと帰るのです。都会の喧騒を忘れさせる、不変の安心感お洒落な個室も、洗練されたマニュアル通りのサービスもここにはありません。立ち上る湯気の向こう側で、職人さんが無駄のない動きで次々と串を捌いていく。その活気と、少しだけ無骨な優しさが、不思議と心を解きほぐしてくれます。
「最近、綺麗すぎる店ばかりで、なんだか息苦しいな」と感じているあなた。名古屋駅から徒歩圏内、八幡屋の暖簾の先には、数枚の小銭と1,000円札一枚で手に入る、圧倒的な「生の充足感」が待っています。お会計を済ませて店を出たとき、名古屋駅のビル群の灯りが、少しだけ優しく感じられるはずです。口の中に残る味噌の余韻を感じながら、夜風を浴びて駅へと歩く。そんな素敵な「名古屋の夜」を過ごしたいなら、ぜひこの赤い看板を目指してみてください。一度あの味噌の海に串を潜らせ、その深淵を味わってしまったら、あなたももう八幡屋の魔力から逃れられなくなるはずですよ。
