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伏見で味わう
黒い味噌おでん

八丁味噌が染み込んだ真っ黒な大根!伏見の老舗「島正」のどて焼き(味噌おでん)は、おつゆまで飲み干せる旨さ

八丁味噌の極致!伏見「島正」で味わう真っ黒な大根の衝撃|おつゆまで飲み干せる至高のどて焼き名古屋、伏見。最新の高層ビルが建ち並び、せわしなく人々が行き交うビジネス街の路地裏に、夕暮れ時になるとふわりと、どこか懐かしく、そして芳醇な味噌の香りを漂わせる場所があります。

 

そこが、昭和24年の創業以来、名古屋の酒飲みたちの胃袋と心を掴んで離さない老舗「島正(しましょう)」です。名古屋に数ある味噌おでん(どて焼き)のお店の中でも、ここが放つオーラはやはり別格。正直なところ、初めて訪れた人が島正の大根を目にしたとき、誰もが一度はこう思うはずです。「……これ、本当に食べられるの?」と。それほどまでに、ここの大根は、文字通り「真っ黒」なのです。

 

10日間の魔法が解ける瞬間カウンターの向こう側、長年使い込まれた大きな鍋の中で、黒光りする味噌の海にどっぷりと浸かり、グツグツと静かに煮込まれている「どて焼き」。その主役である大根は、なんと提供されるまでに10日間もの歳月をかけているのだそうです。「ただ煮込んでいるだけじゃないの?」と思うかもしれませんが、それは大きな間違い。毎日、火を入れ、休ませ、また火を入れる。その繰り返しの工程を経て、八丁味噌が細胞の一つひとつにまで染み込んでいくのです。いざ、目の前に現れたその黒い塊に箸を当ててみてください。驚くほど抵抗なく、スッと吸い込まれるように入っていくその感覚。そして口に運んだ瞬間、あなたの名古屋めしに対する常識は、鮮やかに塗り替えられることになります。見た目の凄まじいインパクトからは想像もつかないほど、その味はどこまでも優しく、そして上品。

 

八丁味噌特有の強い塩気や渋みは、10日間の旅路の中で角が取れ、代わりに野菜の自然な甘みと、丁寧にとられたお出汁の深い旨味が顔を出します。噛む必要さえほとんどありません。舌の上で、味噌と大根が一体となってとろけていく……。これこそが、島正が「元祖」と謳われる所以なのです。

 

「おつゆ」に隠された、職人の誇り名古屋の味噌料理といえば「味が濃くて、おつゆなんて飲み干すのは無理」というイメージが強いかもしれません。何を隠そう、私もかつてはその偏見に囚われていた一人でした。でも、ここ島正では、ぜひお皿に残ったおつゆを最後まで味わってみてください。さらりとしていて、重たさを一切感じさせないそのつゆは、もはや「スープ」と呼んだほうがしっくりくるかもしれません。牛スジやホルモンから出た良質な脂が味噌に溶け出し、濃厚なコクがあるのに後味は驚くほどクリア。最後の一滴まで飲み干した後に感じるのは、胃の奥からじんわりと広がる温かな安心感です。これに熱燗を合わせれば、一日の仕事の疲れなんて、どこかへ吹き飛んでしまいます。

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締めは「どてめし」か、それとも「オムライス」かどて焼きの単品も素晴らしいですが、食事として完成させたいなら「どてめし」は外せません。とろとろに煮込まれた牛スジ肉が、たっぷりの味噌と共に白米を覆い尽くすその姿。ここに、これまた真っ黒に染まったおでんの「卵」を乗せ、半分に割って黄身を絡めながらかき込む……。これ以上の贅沢があるでしょうか。

 

さらに、ここだけの話を。実は島正には、常連客の間で愛される「どて焼き入りのオムライス」なんていう変わり種メニューも存在します。和と洋が絶妙に融合したその味わいは、老舗でありながら常に美味しさを探求し続ける島正の、柔軟な遊び心を感じさせてくれます。最後に店内には、昭和の面影が色濃く残る、しっとりとした情緒が満ちています。一人で訪れても、職人さんたちが手際よく料理を仕上げる様子を眺めているだけで、不思議と寂しさは感じません。隣の席のベテラン会社員が、満足げに大根を頬張る姿。それもまた、この店を彩る最高のご馳走です。

 

お洒落なバルや賑やかな居酒屋チェーンも良いですが、たまにはこんな歴史の重みと、職人の執念にも似たこだわりが詰まった店で、自分をリセットしてみてはいかがでしょうか。「名古屋めしは重たくて、ちょっと……」と敬遠しているあなた。伏見の路地裏で出会う、この真っ黒な大根の一切れが、あなたの「美味しい」の基準を優しく、しかし確実に変えてくれるはずです。赤い暖簾をくぐり、カウンターに腰を下ろす。そこには、10日間かけて完成された、あなたを待つ「至福」が静かに煮えていますよ。

​名古屋ごちそう横丁

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