栄で味わう
味噌煮込み

山本屋総本家 本家で汗だく絶品ランチ!グツグツの土鍋と驚愕のコシ麺を堪能名古屋の街に足を踏み入れた瞬間、どこからともなく漂ってくる香ばしい味噌の匂い。その香りに誘われて、吸い寄せられるように辿り着くのが、栄の喧騒の中にどっしりと店を構える「山本屋総本家 本家」です。
名古屋に星の数ほどある味噌煮込みうどん店の中でも、ここ本家の看板は、一際強い風格を漂わせています。正直に白状します。初めてここの味噌煮込みうどんを食べたとき、私は「え、これって生煮えなんじゃないの?」と本気で店員さんを呼び止めそうになりました。箸で持ち上げた麺が、あまりにも硬く、芯がしっかりと残っていたからです。しかし、これこそが大きな勘違いであり、名古屋が世界に誇る「究極の食体験」の始まりだったのです。大正14年の創業から100年近く、一歩も譲らずに守り続けられてきた独自のコシ。これこそが、山本屋総本家が「名古屋の魂」と呼ばれる理由に他なりません。
迷いやすい「総本家」と「本店」の違いここで少し、名古屋初心者の方のために「ここだけの話」を。名古屋には「山本屋総本家」と「山本屋本店」という、名前がよく似た二つの有名店が存在します。どちらも素晴らしい名店ですが、実は全く別の会社。今回訪れた「総本家」は、歴史を感じさせる落ち着いた雰囲気と、職人気質な味わいが特徴です。メニューもシンプルで、伝統を重んじる姿勢が隅々まで行き届いています。栄にあるこの「本家」は、まさにその歴史の原点。そんな背景を知ってから暖簾をくぐると、一杯のうどんに対する敬意がさらに深まるから不思議ですよね。
土鍋の蓋は「お皿」。穴がないのには理由がある注文して待つ間、期待を高めてくれるのが厨房から響いてくる、重厚で力強い「グツグツ」という音。そしてついに、使い込まれた趣のある土鍋が目の前に運ばれてきます。驚くことに、ここの土鍋の蓋には「空気穴」がありません。これ、初めての方は不良品じゃないかと疑ってしまうかもしれませんが、これこそが山本屋流の合理的な工夫なんです。蓋を裏返してお皿代わりにして、熱々のうどんを移し、冷ましながら食べる。穴がないのは、スープが漏れないようにするため。最初はお行儀が悪いような気がして、キョロキョロと周囲を伺いながらドキドキして食べ始めましたが、常連さんたちが当然のように蓋を使いこなしているのを見て、私も「名古屋人の仲間入り」をしたような誇らしい気分になりました。
煮え滾る味噌の海と、覚悟のいるコシ蓋を開けた瞬間、立ち上る真っ白な湯気と、鼻を突き抜けるような濃厚な八丁味噌の香り。土鍋の中では、特製の味噌スープが文字通り「煮え滾って(にえたぎって)」います。まずはスープを一啜り。厳選された岡崎産の八丁味噌と白味噌をブレンドし、そこに鰹出汁の力強い旨味が合わさっています。喉を通り抜ける瞬間に、渋み、コク、そして深い甘みが三位一体となって押し寄せる。そして、いよいよ例の「超硬派」な麺です。あえて塩を使わず、小麦粉と水だけで打たれた麺は、濃厚な味噌の中でも決して伸びることなく、噛みしめるたびに小麦の香りが口いっぱいに弾けます。「硬い」のではない、これは「力強さ」なんだ。そう気づいた頃には、もう箸が止まりません。汗だくの先にある、最高の爽快感具材の「かしわ」の旨味、甘い脂が溶け出す油揚げ、そしてシャキシャキのネギ。
さらに、土鍋の中央で神々しく鎮座する生卵。これをいつ割るか……。最初は麺を絡め、中盤で少し固まりかけた黄身を掬い、最後はスープに溶け込ませる。一杯の中でストーリーが展開していくような楽しさがあります。気づけば、額からは滝のような汗が。ハンカチどころか、タオルが手放せないほど。でも、この「汗をかきながら、ハフハフと熱いものを喰らう」ことこそが、味噌煮込みうどんの真の醍醐味なんです。食事の後半には、忘れずに白ご飯を注文しましょう。残った濃厚なスープに、少し固まった卵の欠片、そしてご飯を投入して作る「即席味噌雑炊」。これはもう、反則級の旨さです。
最後に、お口直しの浅漬けをポリリ。この漬物がまた絶品で、味噌の濃さを一度リセットし、再びうどんへと向かわせる名脇役として機能しています。最後に冬はもちろん、実は夏の暑い日にこそ、クーラーの効いた店内で汗を流しながら食べるのが最高に贅沢。ランチタイムを終えて店を出たとき、名古屋の熱風さえもが不思議と爽快に感じられるはずです。「本当に美味しい味噌煮込みうどんを食べたい」。そんな願いを抱いて名古屋を訪れたなら、迷わず山本屋総本家 本家の扉を叩いてみてください。そこには、100年の歴史が煮込まれた、あなたの想像を一段階超えてくる「本物の熱狂」が待っています。食べ終わった後のその汗は、あなたが本物の名古屋めしに挑んだ証なのです。
