覚王山で味わう
南イタリア

覚王山の名店「ナプレ」実食レポ|予約困難な南イタリアの風を感じる至福のひととき名古屋の喧騒を少し離れ、洗練された大人の空気が流れる街、覚王山。地下鉄の駅から地上へ出ると、歴史ある日泰寺へと続く参道が、どこか懐かしくも上品な香りを運んできます。そんな参道の賑わいから一歩離れ、静かな住宅街へと足を踏み入れたその先に、
今回のお目当てである「ピッツェリア トラットリア ナプレ」はあります。正直なところ、ここを訪れるには少しばかりの「運」と、しっかりとした「準備」が必要です。
名古屋を代表するイタリアンの名店として知られるこの店は、平日・休日を問わず予約の電話が絶えません。数週間先、時には一ヶ月先まで席が埋まっていることも珍しくない「予約困難店」。でも、その高いハードルを超えて、重厚な扉を開けた瞬間に広がる薪窯の香ばしい匂いに包まれれば、誰もが「待ってでも来てよかった」と、確信することになるでしょう。炎と職人が織りなす、ナポリの鼓動店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、イタリアの職人が手がけたという荘厳な薪窯。赤々と燃える炎の揺らめきが、まるで歓迎の儀式のように私たちの期待を煽ります。カウンター越しに見える、職人さんの無駄のない、流れるような手つき。生地を伸ばし、具材を乗せ、命を吹き込むように窯へと送り込む。その一連の動作は、もはや一つの芸術を鑑賞しているかのような錯覚さえ抱かせます。
今回いただいたのは、ナプレの代名詞とも言える「マルゲリータ」。運ばれてきた瞬間、そのビジュアルの美しさに思わず息を呑みました。薪の強火力で一気に焼き上げられた生地は、縁の部分(コルニチョーネ)がぷっくりと、生命力に満ち溢れたかのように盛り上がり、香ばしい焦げ目が美しい斑点模様を描いています。一口かじれば、もう言葉は必要ありません。驚くのは、その生地の圧倒的な「存在感」です。外側はサクッと香ばしく、中はもっちりとした弾力。それでいて、口当たりは驚くほど軽やかで、噛みしめるたびに厳選された小麦の芳醇な香りが鼻を突き抜けます。この生地こそが、ナポリピッツァの伝統を守り抜き、数日間の熟成を経て完成された結晶。そこに、フレッシュなトマトソースの酸味と、とろりと溶け出した水牛モッツァレラの濃厚なコクが重なり、バジルの爽やかな香りがすべてを完璧にまとめ上げています。「ピザなんてどこも同じでしょ?」と思っている人にこそ、この一枚を食べてほしい。そこには、あなたのこれまでの常識を根底から塗り替えるような、圧倒的な「本物の味」が宿っています。
ピッツァを彩る、南イタリアの恵みナプレの魅力は、ピッツァだけにとどまりません。南イタリアの太陽をたっぷり浴びた野菜を使った前菜や、魚介の旨味が凝縮されたパスタ。どの皿をとっても、素材の持ち味を最大限に引き出すための、無駄を削ぎ落とした潔い味付けが印象的です。特に、前菜の盛り合わせは、一皿ごとに「今日はどんな驚きがあるだろう」というワクワク感を与えてくれます。オリーブオイルの香りが引き立つカルパッチョや、ハーブの香りが心地よい温菜。これに、イタリアから厳選して仕入れたワインを合わせれば、ここはもう名古屋ではなく、アマルフィの海岸沿いにあるテラスにいるような、そんな優雅な気分に浸ることができます。
さらに、食後のデザートとエスプレッソまでが、この店の「完璧なストーリー」の一部。濃厚なティラミスや、季節のフルーツを使ったドルチェ。そして、ガツンと濃いイタリアンローストのエスプレッソを啜れば、至福の時間は最高潮のまま幕を閉じます。覚王山の静寂の中で、記憶に刻まれる食事を店内は、木の温もりを感じさせる落ち着いた内装でありながら、スタッフさんたちのキビキビとした、明るいサービスが心地よい活気を生み出しています。「いらっしゃいませ!」という元気な声、ワイングラスが重なる繊細な音、そしてあちこちから聞こえてくる「美味しいね」という楽しげな会話。そんな空間そのものが、ナプレという店を形作る最高の調味料になっているのです。大切な記念日に、あるいは自分へのとびっきりのご褒美に。予約の手間を惜しんででも、ここには来る価値があります。
お会計を済ませ、心地よい満腹感と共に店を出たとき、覚王山の穏やかな街並みが、いつもより少しだけ優しく、輝いて見えるはずです。それは単にお腹が満たされたからではなく、職人の情熱と伝統が詰まった「本物」に触れたことで、心が豊かに満たされたから。「最近、心から感動する料理に出会えていないな」と感じているあなた。覚王山の路地裏で待っているのは、あなたの味覚と心を鮮烈に揺さぶる、至福の南イタリア体験です。その扉の先には、日常を忘れさせてくれる、熱烈で温かな世界が広がっていますよ。
