栄で味わう
元祖手羽先

元祖の誇り!「風来坊 本店」の手羽先唐揚げ実食レポ|ビールが進みすぎて困る至福の味仕事終わり、あるいは旅の夜。「あぁ、今日は旨いビールと、これ以上ない最高のアテが欲しいな」と思ったとき、名古屋・栄の喧騒の中で真っ先に足が向いてしまうのがここ。
手羽先唐揚げの元祖として知られる名店「風来坊 本店」です。今や名古屋のソウルフードとして全国に名を馳せる手羽先ですが、その歴史はこの風来坊から始まりました。正直なところ、名古屋以外の方だと「手羽先といえば、世界の山ちゃんでしょ?」と思うかもしれません。確かに、コショウがガツンと効いた山ちゃんも旨い。でも、地元・名古屋の人々に「どっちが好き?」と聞けば、驚くほど高い確率で「うちは絶対、風来坊派!」という、静かですが熱烈な答えが返ってきます。一体、元祖の何がそこまで人を惹きつけるのか。その秘密を確かめに、今夜もあの暖簾をくぐってきました。
偶然から生まれた、奇跡の「元祖」ストーリーお店の話をする前に、ちょっとだけ「ここだけの話」を。
実はこの手羽先、最初は看板メニューにするつもりじゃなかったんだそうです。昭和30年代、創業者の大坪健庫氏が、当時主流だった「ターザン焼き(若鶏の丸焼き)」に使うタレを、仕入れすぎた手羽先に使ってみたのが始まり。当時は捨てられることも多かった手羽先を、なんとか美味しく食べられないかという職人魂が生んだ、偶然の産物だったのです。そんな歴史に思いを馳せながら飲む一杯は、また格別な味わいがします。
「2度揚げ」が作り出す、魔法の食感お店に入ると、そこには昭和の活気がそのまま現代に息づいているかのような、温かくて活気ある空間が広がっています。カウンターに座り、まずは迷わず「手羽先、とりあえず3人前!」と注文。ほどなくして運ばれてくる手羽先は、小ぶりながらも飴色に美しく輝き、甘辛いタレと香ばしいゴマの香りが一気に鼻をくすぐります。風来坊の手羽先の最大の特徴は、独自の「2度揚げ」製法にあります。一度目で中までじっくり火を通し、二度目で外側を極限までパリッと仕上げる。一口かじれば、その食感のコントラストに驚くはずです。外はパリパリッと小気味よい音がし、中は肉汁がジュワッと溢れ出す。お肉そのものの旨味がしっかり閉じ込められていて、脂っこさを感じさせない絶妙な仕上がりなんです。タレは、数種類のスパイスを調合した秘伝の熟成ダレ。山ちゃんのような舌が痺れるような辛さではなく、醤油のコクとほのかな甘みがバランスよく混ざり合った、上品で深みのある味わいです。これが、何本食べても飽きがこず、「もう一本、あと一本だけ……」と手が止まらなくなる最大の理由なんです。
綺麗に食べる「風来坊流」の儀式ここで、風来坊を訪れるなら絶対に覚えておきたい「ツウ」な食べ方を伝授しましょう。お店の箸袋にも書かれていますが、これを知っているかどうかで、満足度が変わります。手羽先の関節をポキッと折る。太い方の骨を、ひねるようにしてスルッと抜く。残った肉を一気にパクッ!これなら手をベタベタに汚さず、かつお肉の美味しいところを余すことなく一口で堪能できます。綺麗に2本の骨だけが残ったときの快感は、もはや一つのエンターテインメント。慣れてくると、会話を楽しみながらでもリズムよく食べられるようになりますよ。
ビールとの「無限ループ」を支える名脇役たちもちろん、主役は手羽先ですが、脇を固めるメニューも一切の手抜きがありません。特におすすめなのが「手羽先ギョーザ」。手羽先の中にぎっしりと餃子の餡が詰まっていて、噛んだ瞬間に肉汁のダブルパンチが襲ってきます。
また、創業当時からの人気メニュー「ターザン焼き」も、豪快に肉を喰らいたい気分のときには外せません。お皿の端に添えられた、シャキシャキのキャベツも重要な役割を果たしています。濃いめのタレで満たされた口内を、キャベツが一度リセットしてくれる。この「リセット」のおかげで、ビール、手羽先、ビール、キャベツ……という、恐怖の(?)無限ループが完成してしまうのです。最後に本店ならではの、ベテラン店員さんの無駄のない動き。そして、隣の席から聞こえてくる賑やかな会話。そんな空気感も含めて、風来坊での時間は「名古屋の文化そのものを味わっている」という満足感を与えてくれます。
名古屋駅からもほど近い栄・伏見エリア。観光の締めくくりに、あるいは出張の孤独な夜を彩る最高の一杯に。元祖だけが持つ、時代が変わっても揺るがない安心感と圧倒的な旨さ。次に名古屋を訪れるときは、ぜひ「元祖・風来坊」の暖簾をくぐってみてください。食べ終わってお店を出る頃には、あなたの「お気に入り酒場リスト」に、新しい名前が刻まれているはずです。
